ステッピングモータの種類

ステッピングモータには、3つの基本形があります。
・可変リラクタンス型(VR)
・永久磁石型(PM)
・ハイブリッド型(HB)

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図1 可変リラクタンス(VR)型ステッピングモータの断面図


可変リラクタンス型(VR)
可変リラクタンス(VR)型はかなり以前から使用されています。構造的な視点から理解するのがわかりやすいでしょう。図1に、典型的なVR型ステッピングモータの断面図を示します。このモータは、複数の歯を持つ電磁軟鉄製の回転子(ロータ)と、巻線等から成る固定子(ステータ)で構成されてます。固定子の巻線に直流電流が流れると磁極が励磁され、回転子の歯が固定子極に引き寄せられることによって回転します。

永久磁石型(PM)
永久磁石(PM)型は低コスト、低分解能のモータであり、代表的なステップ角度は7.5度から15度です(48~24ステップ/回転)。PM型モータは、その名前が示すように、モータ構造に永久磁石があります。回転子にはVRモータのような歯はありません。代わりに回転子は、回転子軸に平行な直線上に交互に並べられたS極とN極によって磁化されています。これら磁化された回転子極によって磁束強度が増大されているため、PM型モータはVR型と比較してトルク特性が向上しています。

ハイブリッド(HB)
ハイブリッド(HB)型モータは、PM型よりも高価ですが、ステップ分解能、トルク、および速度に関してより優れた性能を持っています。HB型の代表的なステップ角度は3.6~0.9度です(100~400ステップ/回転)。HB型は、PM型とVR型の両方の優れた点が組み合わされています。回転子はVR型のように複数の歯を持ち、軸の周りに軸方向に同心状に磁化された磁石があります。回転子の歯によってより優れた磁気経路が得られ、磁束は空隙(ギャップ)の指定された位置に導かれます。VR型やPM型と比較して、モータの残留、保持および動的トルク特性の幅が拡がっています。

 

一般に使用されるステッピングモータは、PM型とHB型の2つです。システム設計時に、用途要件に適した種類の選択に迷う場合は、まずPM型を評価してみるとよいでしょう。通常、PM型の価格はHB型の数分の一です。PM型が要件に適していない場合は、HB型を選択するとよいでしょう。
 
特殊なステッピングモータがいくつかあります。その1つに、Portescapが開発したディスクマグネットモータがあります。これは図4のように、ロータが希土類磁石のディスクとして設計されています。この型のモータは、慣性が非常に低く、2つの固定子巻線間の結合なしで磁束経路が最適化されるなど、いくつかの長所があります。この型は、一部の用途で不可欠です。

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図4 ディスクマグネットモータの原理図